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食と農

ご当地うどん「讃岐うどん」は、なぜこれだけ愛されるのか

dancyu 2013年4月号 より
田尾和俊

著者
文・田尾和俊(麺通団 団長、四国学院大学教授) 撮影・石井雄司



これぞ讃岐で一番有名な「山越」のかまたまうどん。ゆでたてアツアツのうちに、一気に食べるべし。
これぞ讃岐で一番有名な「山越」のかまたまうどん。ゆでたてアツアツのうちに、一気に食べるべし。

 「讃岐うどんへの愛の量」……というお題をいただいたのだが、愛と言われても私にはあまり縁がないので、ただ淡々とロジックを整理していくしか術がない。そこで、まず、讃岐うどんが多くの人に愛されているのかどうかを、何かの数字で測ってみることにします。「愛はお金じゃ測れない!」という台詞をどこかで聞いたことがありますが(笑)、では何で測るのか?

という答えも聞いたことがないので、とりあえず、まずは県民のご当地グルメに対する愛の量を測るため、都道府県別、人口10万人当たりのご当地グルメ店の数を調べてみました。

すると、

【讃岐うどん】香川県民  10万人当たり約85軒
【広島お好み焼き】広島県民  10万人当たり約65軒
【山形そば】山形県民  10万人当たり約55軒
【信州そば】長野県民  10万人当たり約50軒
【博多ラーメン】福岡県民  10万人当たり約27軒
【大阪タコ焼き】大阪府民  10万人当たり約6軒



という概数が出た。出典は、讃岐うどんは私のもってる数字、その他はネットの中のいろんな情報の寄せ集めなので少々あやふやであるが、これを見るとまあたぶん、ご当地グルメの中では讃岐うどんがトップの店舗数密度であることは間違いないと思う。ただ、「それが愛の量を示しているのか?」と問われれば、「さあ……」と答えるしかないのだが、客が求めなければそれだけの密度の店も成立しないから、とりあえず「讃岐うどんは最も県民に愛されているご当地グルメだ」ということにしておこう。ま、愛の量というより支持の量と言ったほうが近いような気もするけど。

続いて、県外客の讃岐うどんに対する愛の量を測る数字は、たぶんそれを食べに来る県外客の数なんだろうけど、これはデータがどこにもないのでかなり情緒的になる。でも、もう20年も続いているあの行列(大半が県外客)を見せれば、全国のどこのご当地グルメもすごすごと引き下がるしかないと思うので、ここでも讃岐うどんの県外客からの支持の量は他の追随を許さないということにしておこう。

以上、一言で「愛されている」と書けば済むことを長々と延ばして行数を稼ぎましたが、次に「では、なぜそんなに讃岐うどんは愛され、支持されているのか?」について、あまり根拠のない考察をしてみます。

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(写真上)高松市郊外の「うどん本陣 山田家」では、登録有形文化財に指定されているお座敷で、庭を愛でつつうどんが味わえる。 (写真下)店中全員みな一心にうどんを啜る、の図。「谷川米穀店」にて。

「安い、うまい、慣れている」で香川県民は支持をしてきた

第一、香川県民が讃岐うどんにこんなに親しんでいる理由。それは、どう考えても「慣れ」です。「郷土料理だから、郷土の誇りだから、心の故郷だから」等々の理由でうどんを食べている香川県民は、まずいない。たとえれば、「気がついたら阪神ファンになっていた」という大阪人のメンタリティーに似ているかもしれない。

いや、大阪人がそうなのかどうか知らないけど。加えて、安いし手っ取り早く食べられるしそれなりにうまいから、経済性と効率からも慣れやすいということも考えられる。この実にありきたりのニーズが、おそらくベースだと思います。そこに、讃岐うどん巡りブームが起こったわけです。

その結果、県外人がたくさん来始め、全国であまりに讃岐うどん、讃岐うどんと言われ始めたため、後から「本場讃岐うどんの誇り」みたいな精神が香川県民に少しずつ醸成されてきたように思う。事実、ブーム以前は香川県内の飲食業界において「うどん」は底辺扱いされていた業界であり、底辺の庶民の食べ物扱いされていたのです。香川県内の若者はうどんを「ダサイ、おっさんの食い物」みたいな位置づけをしていたし、うどん屋の大将たちも決して地元飲食業界で高い位置づけはされていなかった。それがブーム以後、明らかに胸を張ってうどんを食べに行く若者が増え、大将たちからは「胸を張って“うどん店をやっています”と言えるようになった」という声を聞くようになりました。

そういう流れです。それが、私が見てきた「香川県民の讃岐うどん愛」の大づかみの流れと印象。何となく、「後付けの郷土愛」みたいなのが確実に出てきましたね。

讃岐うどん巡りは「グルメ」というより「レジャー」として愛されている

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JR高松駅の入場券160円のうどんバージョン。全5種を大人買いすればサービスでお品書きも付く。

第二に、香川県外の人たちが讃岐うどんを食べにこんなに香川に来ている理由。これはもう、いろんなところでいろんな方々が分析をしたり論評してきているから、私があえて述べるまでもない。曰く、バブル崩壊後の「安・近・短」のニーズに合致したとか、ご当地グルメブームに乗っかったとか。いずれも確かに1つの要因ではあると思う。ただし、「安・近・短」ニーズの時代が来てもご当地グルメブームが来ても、それに乗っかれなかったご当地グルメはたくさんあるから、讃岐うどんにはそれらにはない決め手があったということである。

私が思うその決め手とは、讃岐うどんの店群が単なるご当地グルメではなく、「レジャーとしての魅力」をもっていたことである。「食べに行く」プラス「あのおもしろそうなうどん屋を巡りに行く、遊びに行く」のである。キーワードは「うまい」ではなく、「おもしろい、楽しい、怪しい」。それは、私が最初からマーケティング戦略として意識をしてきた大事なコンセプトであり、私が「讃岐うどんブーム」ではなく「讃岐うどん“巡り”ブーム」と呼び続けてきたのは、そういう理由からである。

である、である、と偉そうに言ってしまいましたが、すみません。麺通団も讃岐うどんの世界も、緩(ゆる)いです。うどん屋のおっちゃんもおばちゃんも、こんなにブームになってもみんな緩くて心地よい。たまにご機嫌ナナメの時もありますが(笑)、グルメの世界にありがちな気むずかしい巨匠なんて、ほとんどいません。それがまた、多くの人に愛される1つの重要な要素かもしれません。お気楽で楽しい「讃岐うどんテーマパーク香川」。緩いけどおもしろい800軒のアトラクションがお待ちしています。ぜひ遊びに来てくださいね。

※価格、情報は掲載当時

2015年4月17日(金)
詳細は↓をCLICK
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