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食と農

スーパー乳酸菌は毛がボーボーだった

アトピー性皮膚炎の発症を半減させる「LGG乳酸菌」
2015.07.03(Fri) 堀川 晃菜
【著者略歴】
JBpress 編集部・記者。東京工業大学生命理工学研究科を修了。農薬・種苗メーカー、日本科学未来館の科学コミュニケーターを経て、2015年6月より現職。これまでに、生殖医療、遺伝子組換え技術などをテーマに、医療や食に関する記事を科学誌、新聞等に寄稿している。

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「LGG乳酸菌」こと Lactobacillus GG (LGG) / Represented with the kind permission of Antoni Hendrikxs,Matti Kankainen&Willem M.de Vos-Utrecht,Helsinki and Wageningen University

 乳酸菌やビフィズス菌といった善玉菌と呼ばれる微生物、もしくは、それを含む食品を指す「プロバイオティクス」。その言葉も浸透し、スーパーではさまざまな乳酸菌製品を見かける。「○○菌」という固有名詞も続々と登場している。

 そのなかでも、一目置かれている乳酸菌が存在するという。「LGG乳酸菌」(以下、LGG)だ。世界中の研究者がラブコールを送るという、その乳酸菌の正体とは。その実力はいかに。

 日本で唯一、LGGのライセンスもつ海外企業と利用契約を結んでいるタカナシ乳業 商品研究所の宮澤賢司さんに話を聞いた。
LGGだけが持つ「毛」に秘密あり

 LGGの正式名称は、「ラクトバチルス・ラムノーサス・GG」。アメリカの S. L. Gorbach (ゴルバッハ)博士と、B. R. Goldin(ゴルディン)博士によって1985年に発見され、分離された乳酸菌だ。「GG」は、彼らの頭文字に由来している。

 LGGの最大の特徴は「毛」だ。一般に、乳酸菌は、その形状により細長い桿菌(かんきん)と丸い球菌に分けられる。いずれにしても、その表面は“ツルっと”しているのだが、このLGG(桿菌)は、表面から明らかに毛らしきものが生えている(冒頭の写真)。この「Pili(ピリ)」と呼ばれる線毛こそが、LGGの強みだという。

 「LGGは、通常の乳酸菌よりも持続性が高いことが特長です。ピリを持つことで、腸の表面に付着する能力が高いことが分かっています。遺伝子組換えによってピリを取り除いたLGGでは、付着性が極端に落ちることが確かめられています」と宮澤さんは話す。

 つまり、ピリと呼ばれる毛のおかげで、LGGは腸にくっつきやすく、腸内に長く留まることができるのだ。

 当然、研究者たちが、LGGを放っておくはずがない。LGGに関する研究論文の数は、現在までに845報も出されている(2015年6月時点、筆者調べ)。

 これについて、宮澤さんは「LGG自体の健康に有益な機能性についても数多く研究されていますが、最近では、他の菌との比較対象としてLGGを用いることが多いです」と話す。これは、別の乳酸菌を評価する際に「LGGの能力を超えるか」どうかが基準になるほど、LGGがスタンダードな存在であると捉えられる。まさに、世界中で最も研究されている乳酸菌と言えるだろう。

妊婦がLGGを摂取すると子どもはアトピーになりにくい

 さて、そこまで研究されている乳酸菌となると、どのような健康効果が確かめられているのか気になるところだ。乳酸菌でよく知られている整腸作用に留まらず、インフルエンザや花粉症の症状軽減、大腸炎の予防に効果があることなどが報告されている。

 なかでも、研究者の間に大きなインパクトを与えたのが、アトピー性皮膚炎の予防に関する研究だ。フィンランドの研究者チームによって、医学誌『ランセット』などに報告されている。

 アトピー性皮膚炎(以下、アトピー)は、年々、患者数が増加しており、特に新生児の患者数の急増が問題となっている。

 疾患の原因は完全には解明されていないが、先進国での発症率の上がり方からすると、遺伝的要因とは考えにくく、仮説の1つに「衛生仮説」がある。抗菌グッズが溢れたり、子どもが砂場で遊ぶ機会も減ったりと、生活環境がキレイすぎることで“触れるべき菌に触れていない”ことが要因ではないかと考えられている。

 腸管には、免疫細胞の約6割が存在すると言われている。乳幼児が、さまざまな細菌に接触する機会が減ったことで、腸管に存在する免疫細胞も刺激を受けにくくなり、免疫システムが健全に発達していないのではないかと考えられている。

 そして、宮澤さんは「LGGのアトピー性皮膚炎に関する研究で興味深い点は、研究者たちが、子どもではなく、母親にアプローチしたところです」と話す。本人もしくは、家族にアトピー発症歴のある妊婦を対象に、LGGを摂取し、その子どものアトピーの発症を調べるというものだ。

 「赤ちゃんが初めて菌に触れるのは、産道です。そのため、この研究チームは、まず母体の状態を良くすることが重要だと考えました。生まれてくる赤ちゃんが、良い菌に触れることによって、適切な刺激を受けて、アトピー性皮膚炎の予防につながるのではないかと考えたわけです」

 そこで、この研究では、被験者を2つのグループに分けた。1つは、母親がLGGを摂取するグループで、出産の約1カ月前(2~4週間前)から、母乳を与える出産後6カ月までの期間、LGG入りのカプセルを摂取した。もう1つのグループは、同じ期間中、プラセボ(偽薬)を飲用した。つまり被験者の母親たちは、自分が摂取しているカプセルがLGG入りか否かを知らない。そして、両グループの母親の子どもが2歳、4歳、7歳になった時点でのアトピーの発症率を比較した。

 その結果、LGGを摂取した母親から生まれた子どもは、2歳の時点で発症率が23%(64人中15人)であったのに対し、摂取していない母親から生まれた子どもでは、発症率が46%(68人中31人)となった。つまり、アトピーの発症率が半分に抑えられる結果となった。

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2001年、2003年、2007年に発表されたアトピー性皮膚炎の抑制に関する研究の概略図(提供:タカナシ乳業)

 さらに、4歳では、摂取したグループが26%の発症率であったのに対し、摂取していないグループでは46%、7歳では摂取したグループが43%、摂取していないグループは66%となった。

 「この研究チームは、アレルギー疾患の子どもたちの腸は炎症を起こしているとみられることにも着目していました。出産前だけなく、出産後にもアプローチする方法として、母乳を通じた効果を期待したのです。実際に、母親がLGGを摂取することで、母乳中の抗炎症性成分の含有率が高くなることが分かりました」と宮澤さんは話す。

分泌するタンパク質が、腸をいたわる

 LGGのさまざまな健康効果が示される一方で、そのメカニズムの解明に向けた研究も行われている。

 LGGから分泌されるタンパク質が、腸管上皮の炎症を抑え、バリア機能を維持する働きをもつことが知られている。

 これは、LGG分泌タンパク質の「p40」と「p75」が、化学物質の受け皿となる腸管上皮の「受容体」に作用することで、①炎症によって引き起こされる「アポートシス」と呼ばれる細胞死を抑制する、炎症抑制の効果と、②細胞と細胞を接着するつなぎ目(タイトジャンクション)が破壊されないようにする、バリア機能維持の効果を発揮することが報告されている。

菌と共生するコツ「プロバイオティクス」

 一般に、乳酸菌は、その名の通り「乳酸」を分泌することで、腸管内の酸性度を高め、有害な菌の増殖を抑えつつも、ビフィズス菌など有用な菌を増やす作用を持つ。特に、腸管への付着力を高める「ピリ」を持つLGGは、腸内に長く留まることにより、腸内環境を整え、免疫の底力を高めていると考えられている。

 LGGは、消化器感染症に対する効果も確認されている。子どもの病気の中でも、感染力が強いことで知られるロタウイルス胃腸炎は、激しい下痢や嘔吐といった症状で子どもたちを苦しめる。このロタウイルス胃腸炎においても、発症率の減少や、発症してもその症状が軽減されることが確認されている。

 「体質改善という考え方で、10日~2週間は継続的に乳酸菌を摂取してほしい」と宮澤さんが話すように、有用微生物により腸内細菌叢(腸内フローラ)のバランスを整える「プロバイオティクス」の効果は、一朝一夕で得られるものではない。根気強く、微生物と長く良き関係を築きたいものだ。



【参考】アトピー性皮膚炎の抑制に関する研究論文

 Kalliomaki et al. The Lancet(2001)

 Kalliomaki et al. The Lancet(2003)

 Kalliomaki et al. J. Allergy Clin. Immunol.(2007)

*「LGG乳酸菌」は登録商標です

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