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特集ワイド:世界43位に失墜 東大、ホントに「超国際」?

 日本の「スーパーグローバル大学」の雄が世界43位では看板倒れ? 9月30日に発表された英教育誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)」の世界大学ランキングで、東京大はアジア首位から転落し、シンガポール国立大、北京大に次ぐ3位、世界順位は2年続いた23位から20位もダウンした。東大で学ぶ外国人留学生と研究者は、この“国際価値暴落”をどう見ているのか。尋ね歩きながら、復権の道を探った。【堀山明子】

「2年前に東大に来た時、THEのランクは23位だったから残念だよ」。出身の英国で博士号取得後、東大大学院の天文学研究室で学術研究員を続けるマーク・ハマンズさん(34)は複雑な表情を浮かべた。博士号取得後、プロジェクト単位の研究生活を送る「ポスドク」は、業績が確立するまで世界中の研究機関を転々とする場合が多い。ハマンズさんは、赤外線観測装置を用いた世界最先端の研究環境にひかれて東大を選んだ。「研究者にとっては番付より研究環境やテーマが重要だ。でも……世界100位以内なら問題ないけれど、それ以下だとちょっと悩むかな」

 番付を気にするのは、研究者の卵たちも変わらない。同じ研究室で3年前から学ぶ博士課程1年生の米国人、アロン・ベルさん(24)は「世界のトップ3は競争が激しすぎるから受験しなかったけど、50位以内で研究テーマが合致するところを探した」と言う。もし今年、受験していたら43位はギリギリセーフだが、今後さらに失墜したら他大学へ行ってしまう? 「すごく低かったら考えるね。研究テーマが決まっていない学部生は、もっと単純に影響を受けるのでは」。たかが番付、されど日本人が考える以上に、世界の教育市場に与える波紋は大きそうだ。

 東大「失墜」の直接の原因は、世界の英語で書かれた主要論文で引用される論文数が急落したことだ。THEの番付は5分野を各100点満点で評価したうえで、配分比率に応じて合算した総合点を競う。内訳は、教育(配分30%)▽研究(30%)▽引用された論文数(30%)▽国際性(7・5%)▽産業界からの収入(2・5%)。東大は今年、教育81・4▽研究83▽引用された論文数60・9▽国際性30・3▽産業界からの収入50・8で、計71・1点。昨年の76・1点から5点も下げた。国際性は昨年も32・4点と低く長年の課題だが、得点の比重が大きい論文点で74・7から14ポイント近く下げたのが響いたのだ。

 日本は13年に策定した「日本再興戦略」で、今後10年で世界の上位100校に10校以上のランクインを目指すとした。昨年にはスーパーグローバル大37校を指定、支援し始めたばかりだった。

 文部科学省高等教育企画課の森田正信課長は「日本の論文引用率が相対的に低迷しているのは事実だが、1年でここまで落ちるとは考えにくい」と言い、今年から引用論文数を検索するデータベースが変更になった影響を示唆する。

 確かに今年、計算方式は変わった。番付発表時のTHEの説明によると、引用論文数を数える学術データベースの会社がエルゼビア社に変わり、各国で出版された学術雑誌が多く網羅されるようになった。その代わり、昨年まで英語圏だけが有利にならないよう考慮して国別に加算していた変数の割合を今年は減らしたという。国別の調整点は公表されていない。

 新方式は日本に不利に働いたのか。エルゼビアの東アジア地域責任者、福崎一郎さんに聞くと「今年は日本と韓国が全体的に順位を下げた。国別の計算が変わった影響を受けた可能性は高いと言えます」とあっさり認めた。THE幹部は発表1週間前に訪日し、日本の有名大学二十数校を集めた席で「昨年と成績を単純に比較しないように」と事前に説明していたという。

 とはいえ、これまでは英語が不得意な国に履かせたゲタのおかげで高得点を挙げていたのだから、43位の方が実力とも言える。ということは、来年すぐに20位台に戻る可能性は低く、ここからベスト10を目指すしかないのだ。

 東大理学部出身で、米プリンストン大で客員研究員をした経験もある高橋洋一・嘉悦大教授は「論文数を急増させている中国は順位を上げているのだから、計算方式変更は言い訳にならない」と厳しい。「研究費と論文数は相関関係があり、近年の大学予算削減が論文数低迷を招いた。政府助成の増額が難しければ、大学に寄付が集まるよう税額控除して、支援の仕組みを整えるべきだ」と問題提起をする。

 英語で授業を受け、外国の教員や学生と授業の外でも英語で会話する国際的な環境を整えたモデルコースが、東大の学部レベルにある。世界のエリートを集めるために12年から学部に開設した、英語による単位取得コース(PEAK)だ。彼らは東大の国際性をどうみているのか、1期生に聞いた。

 「英語で行われる一般授業は北京大のほうが多かったわ」と話すのは、東大在学中に北京大で1年学んだ韓国人留学生、李瑞珍(イソジン)さん(22)だ。世界13位のカリフォルニア大バークリー校を蹴って東大を選んだ。「東アジアの比較研究に関心があったから、それならバークリーより東大かなと。留学制度があると知って、発展する中国でも学びたくなった」。東大は世界へジャンプする踏み台という感じだ。

 李さんによると、1期生27人のうち11人が東大在学中に志願してもう1校、海外留学した。東大受験と同時に世界の有名大10校前後に合格した人が多い。東大入学後もステップアップにはどこで学ぶのがいいか、仲間同士で情報交換を続けているという。米ミシガン大に留学したポーランド人、アンナ・ボジュニさん(24)は「東大だけにとどまっては、クラスで後れをとると焦った」と笑う。

 積極的なPEAK留学生に圧倒される一方、日本人学生の内向きさが心配になる。東大生の海外留学率は平均2%弱。学内で既に留学生と日本人の向学心の差が歴然としているではないか。そういえば、博士課程のベルさんも「東大生は留学どころか、国際会議にも参加したがらない」と不思議がっていた。

 東大は13年からの10年で外国人教員を倍増の1160人、留学生を11%から25%に増やす計画だ。一方、日本人の海外留学は学部で15%、大学院で6%に増やす程度。外国人を受け入れる方に国際化の比重が置かれている。これに対し高橋教授は「もっと日本人が海外に出ないと視野が広がらない」と疑問を投げかける。「日本人の海外留学や研究を増やしたほうが英語力向上、論文数増加に効果がある」と言うのだ。

 東大生が海外に出て国際競争に挑む意思を持てなければ、そもそも出発点から勝負になっていないのではないか。

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 ◇THE世界大学ランキング

順位 大学(国)            総合点

 1 カリフォルニア工科大(米国)   95.2

 2 オックスフォード大(英国)    94.2

 3 スタンフォード大(米国)     93.9

 4 ケンブリッジ大(英国)      92.8

 5 マサチューセッツ工科大(米国)  92.0

         …

26 シンガポール国立大(シンガポール)79.2

42 北京大(中国)          72.0

43 東京大(日本)          71.1

44 香港大(香港)          71.0

47 清華大(中国)          70.0

55 南洋理工大(シンガポール)    68.2

59 香港科技大(香港)        67.2

85 ソウル大(韓国)         60.5

88 京都大(日本)          59.9


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毎日新聞 2015年10月21日 東京夕刊

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