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発酵・醸造食品

研究で実証、目の下のクマには甘酒が効く---暑い季節に熱い甘酒の話(後篇)

2016.07.22(Fri) 漆原 次郎

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甘酒。現代では暑い季節に「冷やし甘酒」という飲み方も。

「甘酒」をテーマに、その歴史と科学を見ている。

 前篇(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47350)では、夏の季語という事例が示すように、かつて甘酒が「夏の飲みもの」だったという経緯を探った。江戸では、鰻を夏の盛りである「土用丑の日」に食べるようになったのと時を同じくして、甘酒も「夏の飲みもの」への転換が図られたといった歴史を追った。

 たとえ夏であっても、甘酒を飲む。そこには、人々の「栄養満点で滋養強壮に効果あり」という直感があったのだろう。そして現代になり、そうした直感は科学的な観点で裏づけられつつある。

 そこで後篇では、甘酒の体に対する健康効果の研究成果を紹介したい。話を聞いたのは、甘酒飲料のシェアでトップを行き、甘酒に関する研究にも力を入れる森永製菓だ。ストレス抑制の効果や、皮膚に対する健康効果などが明らかになっているという。

夏バテ”軽減効果で「飲む点滴」の面目躍如

 夏に甘酒を飲む習慣は、江戸時代中期から少なくとも昭和時代の初期ごろまで長く続いた。単なる一時的流行に終わらず、百数十年間もこの食習慣が続いていたのは、人々が甘酒による「暑気払い」などの効果を感じていたからではないだろうか。

 実際、そうした直感に合致するような研究成果が出ている。森永製菓は2013年6月、暑さからのストレス回復を早める「夏バテ回復」の効果が甘酒にあるということを発表した。

 この研究では、マウス20匹を5日間、31℃という真夏の状況下で過ごさせた。その間、マウスに餌と水を自由に摂らせたほか、10匹には甘酒を、残りの10匹には水を等量、定期的に与えた。そして、その後の「甘酒摂取群」マウスと「水摂取群」マウスの状態や行動の違いを調べたという。

 研究を主導した、森永製菓の稲垣宏之氏はこう話す。

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稲垣宏之氏。森永製菓研究所食品研究開発センター第三グループマネジャー。甘酒の健康効果のほか、カカオの機能性、ポリフェノールの体内吸収性、離乳期の食経験と味覚の関係性、「べにふうき」緑茶の脂肪蓄積抑制効果などの多彩な研究を手がけている

「31℃の暑熱ストレス環境下でマウスを飼育すると、摂食量や体重の低下のほか、ストレスマーカーである血中コルチコステロン濃度の上昇が見られます。けれども、『甘酒摂取群』においては、摂食量低下や体重低下、また、コルチコステロン濃度の上昇が抑制されました」

 コルチコステロンは、副腎皮質という体の部分から分泌されるホルモンの一種だ。ストレスの負荷がかかると分泌量が増加することが知られている。

 実験ではまた、「甘酒摂取群」と「水摂取群」で自発的な運動量の差も見られた。12時間にわたり自由に運動できる環境をマウスに与えたところ、31℃の環境から出た後では「甘酒摂取群」のほうが1.5倍ほど、自発的な運動量が多くなったという。

「暑さの厳しい時期には、食欲不振や行動意欲の減退などの症状が現れますが、甘酒にはこうした暑熱ストレスを軽減する効果があるものと期待しています」

 では、どのような理由で、甘酒の暑熱ストレス軽減効果が現れたのだろうか。稲垣氏は「甘酒には、ビタミンB、葉酸、アミノ酸、糖質、ミネラルなどが複合的にバランスよく含まれているため、こうした栄養素の作用によるものと考えられます」と説明する。

 甘酒は発酵食品の1つであり、「飲む点滴」という異名を持つ。ビタミン類、タンパク質、糖類の栄養価がそれぞれ高いことが、こうした効果につながっていると稲垣氏は見ている。

 マウスを対象とする研究が、ヒトにも当てはまると考えてよいのだろうか。稲垣氏は、「マウスを用いた疲労やストレスの影響、その予防回復効果の評価法は医学研究において広く認知されており、ヒトでの生理学的評価で重要な位置を占めています」と話す。


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「甘酒摂取群」と「水摂取群」での自発的な運動量の比較。(出典:森永製菓2013年6月18日プレスリリース「『甘酒』が暑さからのストレスの回復を早めることを確認」を参考に作成)

目のクマ改善や、皮脂抑制の効果も

 同社研究所は、甘酒の健康効果についてさらに研究を進めている。夏バテ回復効果だけでなく、甘酒の皮膚に対する健康・美容効果も明らかになってきたという。

 同社は2015年5月、甘酒を飲むことで目の下のクマの改善が見られるという研究成果を発表した。東京工科大学の前田憲寿教授との共同研究によるものだ。

 この研究では、ヒトの女性17名に対して、酒粕と米麹を使用した「甘酒飲料」と、酒粕や米麹を含めずにフレーバーなどで甘酒風味にした「プラセボ飲料」を飲んでもらった。すると「甘酒摂取群」では、「プラセボ摂取群」に対して、目の下のクマの明るさの有意な改善が認められたという。

「甘酒飲料」の飲用後には、皮膚の表面温度の上昇も見られたという。稲垣氏は「血行が促進されて、老廃物の排泄が促進されることで、クマ改善に寄与したのではないかと推測しています」と話す。

 また2016年5月には、甘酒を飲むことによる皮脂抑制効果についての研究成果も発表した。「甘酒飲料」と「プラセボ飲料」を1カ月、継続して飲んでもらった試験において、「甘酒摂取群」のほうでは明らかに頬の皮膚表面の皮脂量が低下したという。細胞レベルの実験でも、脂腺細胞に甘酒の主成分の酒粕や米麹を添加すると、脂腺細胞での脂肪滴の蓄積が抑えられることが分かったという。これらの結果から、稲垣氏は「甘酒摂取により、皮膚での皮脂の産生が抑えられたのではないか」と見ている。

「夏の定番飲みもの」復活への道

 甘酒は、米麹が米などのでんぷんを分解して糖に変える糖化作用などにより作られる。微生物による複雑な過程の末に作られる甘酒に対して、これからも科学的な視点が加わり、これまで人々が抱いてきた「甘酒は体によい」という感覚が、さらに実証されていくことだろう。


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森永製菓の甘酒商品の一部。ほかに、フリーズドライタイプ、1000mlタイプ、粉末タイプなどの甘酒商品も揃える。(画像提供:森永製菓)

 昭和初期頃に再び「冬の飲みもの」と化した甘酒。夏の定番の飲みものとしての復活はあるだろうか。森永製菓は、発売40年以上となる甘酒缶や、春夏期間限定の冷やし甘酒や甘酒しょうがなどの缶タイプ、またフリーズドライタイプ、1000mlの大容量タイプ、粉末タイプと用途別に展開し、また「熱中症ゼロへ」プロジェクト協賛企業としての冷やし甘酒サンプリングや、土用丑の日に向けたサンプリングも行い、夏場の甘酒による栄養補給を提案する。

 同社マーケティング本部の田仲結子氏は、「夏バテ対策や熱中症対策、また美容関連で古くから日本人に親しまれていた甘酒に、改めて注目が集まっていることは喜ばしいことです」とする一方、「一過性のブームになってしまうのではなく、改めて『おいしさ』も実感していただき、日本人にとって身近な嗜好飲料として浸透していってほしい」と話す。

 栄養価の高い食材が世の中に溢れるようになった。そうした中で人々が甘酒に対して「おいしさ」を再認識することが、「夏の定番の飲みもの」としての地位復活の鍵となりそうだ。「おいしい」と「健康によい」は表裏一体の関係でもある。

詳細は↓をCLICK
JBpress
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前編>で 昭和初期ごろから再び冬の飲み物として定着した「甘酒」の検証が行われたが、この極端な変遷(夏場に売れなくなった)にはどうも納得がいかない思いが強い。
後編では永年甘酒の普及に努めて頂いた大手メーカーさんの研究成果などを踏まえて、今後の展開が期待される。

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