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技術・研究

「海水」で生まれ変わった沖縄・久米島

地方創生、成功のカギはオンリーワン創出
林 英樹(はやし・えいき) 2016年11月28日(月)
日経ビジネス記者

大阪生まれ。神戸大学法学部卒業後、全国紙の社会部記者として京都・大阪で事件を取材。2009年末に日本経済新聞社に入り、経済部で中央省庁担当、企業報道部でメディア・ネット、素材・化学業界などを担当。14年3月から日経BP社(日経ビジネス編集部)に出向し、製造業全般を取材している。
※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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沖縄の離島、久米島。透明度の高い海はダイバーに根強い人気がある
 沖縄本島から約100km西方に位置する久米島(沖縄県久米島町)。人口1万人弱の小さな離島が今、世界から注目を集めている。
 きっかけとなったのが、海底から汲み上げられる海洋深層水の有効活用だ。久米島では2000年、水深約600mの海底にパイプを設置。パイプを伝って1日当たり約1万3000tもの海洋深層水を取り出している。海洋深層水の取水設備は北海道や富山県などにも設置されているが、取水量は最大でも同4000t程度。久米島の取水量は突出して多い。
 海洋深層水はただの海水ではない。大きく分けて3つの特徴がある。1つ目は低温性。表面近くの海水は太陽光の影響を受け、22℃~30℃と季節によって水温が変化するが、海洋深層水は年間を通じて8℃前後と低位で安定している。
 海洋深層水には植物の成長に必要な窒素やリン、ケイ酸といった栄養分が多く含まれているのも特徴だ。さらに、細菌などの微生物、汚染物質の数値は表層水の100分の1程度と、清浄性にも優れている。
 久米島では海洋深層水を有償で民間企業などに提供。海洋深層水の特徴を生かしたまちづくりを進めている。
 「世界にも例がないユニークな試みということでこれまでに約180カ国から視察団がやってきた。おかげさまで『海洋深層水の島』というイメージが定着できました」。海洋深層水の活用事業を取りまとめる久米島町プロジェクト推進室の中村幸雄室長はこう胸を張る。

世界唯一の発電所

 海底から引き上げた海洋深層水は、まず海洋温度差発電所で活用される。温かい表層水と冷たい深層水との温度差を利用し、沸点の低い媒体を気化させ続けることでタービンが高速回転、電気を得る仕組みだ。久米島の海洋温度差発電所は出力100キロワット級。世界唯一の実証運転設備として今も電気を作り続けている。

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水深約600mの海底から引かれた取水パイプ(写真上)。深層水だけでなく深海魚が引き上げられることも。下の写真は世界で唯一稼動する海洋温度差発電所
 海洋温度差発電所は近く、1メガワット級の実用設備へと切り替えられる予定だ。中村室長は「久米島全体の電気消費量は6メガワット程度。将来的には島内の電気をすべて海洋温度差発電でまかない、エネルギーの完全自給自足を目指している」と語る。
 発電所を通った海洋深層水は様々な産業で利用されている。海ぶどうとクルマエビは久米島が全国トップシェアを誇る水産品だが、いずれも海洋深層水の活用なしには大量養殖を実現できなかった。
 「成長が遅いと出荷の時期がずれ込むし、早すぎても粒の間隔が広がってしまう。光を当てすぎても横枝が生え、きれいに粒がそろわない。そんな外的環境に左右されやすいデリケートな商品だからこそ海洋深層水が必要なのです」

 久米島の海ぶどう養殖所では年200tもの海ぶどうを出荷している。深層水と表層水とをブレンドし、水温を25℃前後に調整することで、一年中、安定して養殖できるようになった。

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全国一の出荷量を誇る久米島の海ぶどう養殖所。広大な敷地に数多くのいけすが並ぶ
 深層水の特徴である低温性は、活用範囲が広い。例えば、ほうれん草やトマトといった比較的冷涼な気候で育つ野菜の栽培。沖縄では露地で育てることが難しかったが、地中に張った送水管を通して冷たい深層水を流す方法を使い、栽培に成功した。この手法に注目した大手製薬メーカーが近く久米島での野菜栽培事業に乗り出すことが決まっている。
 化粧品メーカー、ポイントピュールは海洋深層水の清浄性を生かした純度の高い化粧品を生産している。同社企画担当の古見実也氏は「化粧品の9割は水でできている。その水にこだわった結果、海洋深層水にたどりついた」と話す。

「あたらない」カキを新名産に

 深層水の3つの特徴をすべて生かした商品開発に乗り出すのが、全国で33店舗のオイスターバーを運営するゼネラル・オイスター(東京都中央区)だ。同子会社のジーオー・ファームは生で食べても「食あたりしない」カキの大量生産を進めている。
 深層水の低温性はカキを育てる水槽の水温調整などに活用。カキの産卵から成貝に育てるまで一貫して深層水を使うことで、食あたりの原因となるウイルスに汚染されない環境を作り上げた。さらに深層水の富栄養性という特徴を生かし、カキの餌となる植物プランクトンの大量培養にも成功した。
 ジーオー・ファームの鷲足恭子社長は「あたらないカキの実現には海洋深層水が欠かせない。2020年に年数百万個を出荷できる体制を整え、カキを久米島の新しい名産にしたい」と意気込む。

久米島の海洋深層水で世界初の一貫した陸上養殖される安全な牡蠣 ←詳細はCLICK

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写真上はポイントピュールが生産する化粧品。写真下はジーオー・ファームが進める「あたらない」カキの養殖設備
 ジーオー・ファームが久米島にカキの養殖設備を置いたのは、海洋深層水だけが理由ではない。「久米島の立地も大きかった」(鷲足社長)という。

 中国や東南アジアの富裕層を中心に生ガキの人気は高まっている。沖縄・那覇空港近くにある国際物流基地を活用すれば、久米島から時間とコストをかけずに輸出することが可能になるからだ。

ゆるキャラだけでは埋没してしまう

 移住プログラム、オリジナル動画の作成、ふるさと納税、ゆるキャラ、B級グルメ…。東京一極集中を是正し、地方の活力を取り戻すことを目的に始まった安倍政権の地方創生政策だが、人やカネを集めるために企画される事業はどれも似たり寄ったりなのが現状だ。コンサルタント会社やPR・広告会社が地方自治体に対し積極的な営業をかけ、パッケージ化された同じようなメニューばかりを提示する弊害も指摘されている。
 久米島でも、いかに観光客を集めるかという点ばかりに腐心していた時期があった。だが、「きれいなエメラルドグリーンの海」だけでは、大型リゾートホテルが建ち、定期便数が多い石垣島や宮古島など他の離島には敵わない。そこで発想を転換、久米島でしか実現できないものを探し出した末に、海洋深層水に行き着いたという。
 「非東京」という打ち出しだけで満足してしまえば、特性は生まれない。結果として、地方創生は単なる掛け声だけで終わってしまうことになるだろう。現在、深層水取水設備の大規模増設を計画している久米島。計画に合わせて東京に本社を置く大企業の誘致案件もいくつか浮上しているといい、オンリーワン戦略が大きな実を結ぶことになりそうだ。

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久米島は海洋深層水に特化した産業振興でオンリーワンの存在を目指す

詳細は↓をCLICK
日経ビジネスlogo_NBO.png

参考
地図: 久米島
海洋深層水 Wikipedia

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1 Comments

senrryu says..."海洋深層水の可能性"
久米島が日本一の取水量とは知りませんでした。
発電も含め様々な応用の可能性があり、すばらしいと思います。

また、牡蠣の養殖については、当地の瀬戸内市でも「虫明カキ」というブランドで知名度がありますが、ノロウイルスの危険性には危機感を持っているようです。
取り組みのようなウイルスの増殖を阻止する深層水の活用は大いに参考になると思います。
2016.11.29 13:40 | URL | #- [edit]

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