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発酵・醸造食品

ブーム拡大中 意外と知らない甘酒のヒミツ

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ヘルシーな飲み物としても注目されている甘酒

 甘酒の消費が近年大きく伸びている。「お正月やひな祭りなどハレの日に飲む飲料」というイメージが強かった商品を、季節を問わずに通年で消費する動きが広がっている。健康志向の高まりや美容への関心が深まる中、ヘルシーな飲料としても注目されており、多様な業界を巻き込んで新製品が次々と登場している。読売新聞調査研究本部の中村宏之主任研究員が、当節の甘酒事情を探った。
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右肩上がりの売り上げ続く

 最近、スーパーに足を運ぶと、数多くの甘酒が売られているのを目にするはずだ。価格帯も100円台から1000円を超えるものまで種類も豊富だ。複数を飲み比べてみると、さまざまな味わいがある。ただ、甘酒は子供の頃に少し飲んだ記憶がある程度で、大人になってから飲む機会はほとんどなかった――という人も多いかもしれない。しかし、今ある各種の商品を飲んでみると、「甘酒は老若男女を問わない、おいしいソフトドリンクである」と再認識するだろう。
 市場調査会社インテージ(本社・東京)のデータによると、甘酒の市場規模は年々拡大している。スーパーのレジを通過した甘酒販売額は、2010年に約32億7000万円だったのが、16年には約130億2900万円と急激に増えた。わずか6年間で、約4倍も売り上げが伸びたことになる。
 この調査がカバーしない流通分や、通信販売、全国各地の酒造会社や土産物店などが独自に販売している商品もあるため、実質的な市場規模はこれより大きいと見られている。
 甘酒はその製法で二つに分けられる。一つは米麹こうじの働きで米のでんぷんをブドウ糖に糖化した甘酒であり、アルコール分は含まれない。もう一つは、酒粕かすを水で溶き、さらに砂糖を加えてつくる甘酒で、1%以下の微量ながら酒粕に由来するアルコールが含まれる場合がある。
 甘酒人気が高まっている背景には、11年頃に巻き起こった「塩麹ブーム」がある。江戸時代からある塩麹を塩代わりの調味料に使った調理法や商品が人気を集めた頃から、消費者が発酵食品全般に注目する流れができ、甘酒消費も伸びるようになった。

「温故知新」森永の挑戦


 甘酒市場で大きな存在感を示しているのが、森永製菓だ。
 手軽に飲める甘酒の全国ブランドとして知られる森永製菓は、1969年にびん、74年に缶入りの甘酒を発売し、半世紀近い歴史がある。森永の主力商品は、酒粕と米麹の双方を使った缶入りの甘酒だ。
 その森永の定番商品が、ここ数年、冬場だけでなく夏場にも売れる勢いを見せている。
 2011年夏のことだ。東日本大震災の発生直後で、全国的に省エネが求められた際に、森永は市場にある提案を行った。それが「冷やし甘酒」だった。「冷やし甘酒」は、2000年から地域限定で売り始めていた商品だが、12年に全国の市場で販売を開始する。すると、猛暑下でも冷たく飲みやすい口当たりで、水分、塩分、糖分補給の助けになって夏バテを防止する――と人気を集めた。これがきっかけで、夏場の消費が伸びるようになったという。
 甘酒は「寒い時期に飲まれる」というイメージが強いものの、伝統的には夏場の飲み物として親しまれており、俳句では夏の季語であることはあまり知られていないだろう。明治の俳人・正岡子規は、「甘酒も飴湯あめゆも同じ樹陰かな」(1901年)と詠み、夏の木陰で甘酒を楽しむ情景を表現している。こうした意味で、森永が甘酒を夏の商戦に投入して成功を収めたのは、まさに「温故知新」と言える。
 ナショナルブランドの地位を確立している森永で、「市場調査や販売促進活動など、ロングセラーにするための努力を続けています」と話すのは、同社で甘酒のマーケティングを担当する田仲結子さんだ。同社は主に西日本向けにショウガ入りの製品を販売しているほか、季節によって味の微調整も欠かさない。原料供給が変動しても、安定した味や品質を出せるように常に数十種類のレシピを用意しているという。ブランド力に依存することなく、地道な活動を通じて市場の維持・拡大を図っている。

麹のプロ…酒造会社、みそ会社の甘酒

 清酒・八海山で広く知られる新潟県南魚沼市の酒造会社・八海醸造も、甘酒の製造・販売を積極的に展開している。「八海山の醸造元だから、酒粕から甘酒を作っているのだろう」と想像しがちだが、商品はその名も「麹だけでつくったあまさけ」――米麹を使った甘酒だ。118グラム入り(税別希望小売価格190円)と825グラム入り(同800円)の2種類を東日本中心にスーパーなどで販売している。
 酒造会社は酒造りに麹を使うことから、扱いに慣れている。同社が10年ほど前に甘酒を製品化して販売したところ、瞬く間に売れ行きを伸ばし、気に入った顧客が繰り返し買うほどの人気商品になった。その動きを南雲なぐも二郎社長は見逃さなかった。
 「これほど消費者のニーズが強いなら、量産が可能かもしれない」と気づいた南雲社長は、甘酒専用の設備投資を決断した。2013年、新潟の本社敷地内に甘酒製造の工場を建設して本格的に生産を始めたところ、予想どおり引き合いが強く、15年秋には追加の設備投資で生産能力を拡大した。
 現在も八海醸造は新たな生産設備を建設中で、今年7月に生産を始める予定だ。甘酒の売り上げは16年8月期に6億7900万円を記録し、同社は17年度にこの2倍以上の売り上げを目指すという。
 南雲社長は「一過性のブームに終わらせることなく、長期的に売れる商品に育て、清酒販売に並ぶ収益源にしていきたい」と意欲を示している。
 みそメーカーも甘酒の主力プレーヤーだ。

 みそ最大手のマルコメが販売する「米糀こうじからつくった甘酒」は、みそ製造で培った発酵技術を使い、無加糖ながら自然の甘さをしっかり感じられるのが特長だ。アルコール分もゼロなので、妊婦や子供が安心して飲める。
 14年から売り出したところ需要が急激に伸び、商品の種類もさまざまに増やしてきた。パッケージの工夫もポイントの一つだ。ふたを開けて電子レンジで温められる紙製パックは、少量の飲みきりサイズで便利だ。今年の3月には、ゼリー商品や高知県馬路うまじ村のゆずをブレンドした製品の発売も予定するなど、消費者ニーズに合わせた商品展開を図る。
 マルコメは16年度、甘酒関連の売り上げが約11億円となる見通しだ。みその売り上げが年間約400億円に達する同社にとって、全体に占める割合はまだまだ小さいが、今後の成長分野として甘酒にかける期待は大きい。同社国内マーケティング課の其田譲治さんは「牛乳を飲めない幼児がこれなら飲んでくれて助かる――という声が、若いお母さんから数多く寄せられている。今後も消費者ニーズをとらえていきたい」と語る。

「甘味×名酒」という夢のコラボ

 甘酒の世界では、「夢のコラボ」ともいえる強力な組み合わせが生まれている。
 和菓子の老舗である東京・日本橋の榮太樓(えいたろう)總本鋪(そうほんぽ)と今や世界的な人気を誇る日本酒・獺祭(だっさい)の蔵元である山口県岩国市の旭酒造が力を合わせてつくったのが、「和菓子屋のあま酒 榮太樓×獺祭」だ。「おいしい甘酒を作りたい」と最高の原料を探していた榮太樓總本鋪と、「日本酒の製造過程で生まれる香り高い酒粕を有効活用できないか」と模索していた旭酒造の考えが一致し、双方の伝統技術を合わせて開発した。

 「和菓子屋のあま酒 榮太樓×獺祭」は、1年以上の時間をかけて十数パターンの試作品をつくる中で、最も味わいの深い配合を見つけて完成させた。時間をかけて酒粕を攪拌かくはんし、さらに高圧力で乳化させることで均一化した。商品はなめらかな口当たりで、すっきりと飲みやすい味に仕上がっている。
 この甘酒は、酒粕の良さを最大限に生かすため、無香料・無着色で製造し、砂糖以外に他の材料を一切使っていないのが特長だ。甘酒の中では「高級カテゴリー」に入る商品で、スーパーなどでは1本あたり1200円(税別)で売られている。昨年11月の発売から4か月間で30万本以上を売り上げるほどの人気を誇っている。
 榮太樓の細田将己・副社長は「国産の酒米、山田錦を磨き抜いてつくる『獺祭』から生み出される酒粕は、華やかな香りと、雑味の少ないうま味が特長です。和菓子製造で蓄積した当社の技術を活用した甘酒を、年間を通じて楽しんでいただきたい」と語る。
 八海醸造や旭酒造ばかりではない。酒造会社では、大手の大関や月桂冠も甘酒販売に乗り出している。甘酒の商品開発はさまざまなプレーヤーが入り交じり、市場は大競争時代に入っている。

機能性に期待、大学発の製品も

 では、人気が高まる甘酒には、どのような効能があるのだろうか?
 発酵学が専門の北本勝ひこ・日本薬科大学特任教授は、甘酒の機能性について、「酒粕甘酒には、α-EG(アルファEG)など保湿成分や腸内で脂肪を包み込むレジスタントプロテインといった成分が含まれていることがわかってきました。米麹甘酒にはアミノ酸、ビタミン、オリゴ糖、麹セラミドなどの健康や美容に良い成分が含まれています」と解説する。
 こうした専門家の研究やコメントをもとに、「甘酒はヘルシーで美容にも良い」という見方が広がり、人気を押し上げているのは間違いない。これまでは「子供か60代以上の飲み物」と見られがちだった甘酒だが、最近は20代から40代の女性を中心に支持が拡大している。日本の伝統飲料が新しいコンセプトで現代によみがえっていると言えるだろう。
 北本特任教授自身も、埼玉県上尾市にある地元の造り酒屋と共同で甘酒を商品化し、「甘こうじ」の名で販売している。さらに北本特任教授は、東大OBの酒造関係者でつくる「東大蔵元会」とも協力し、<東大ブランドの甘酒>の商品化も検討している。いまや大学も甘酒をつくって販売する時代になっているのだ。
 大手企業や各地の酒造会社、そして大学まで、各種各様の試みで甘酒の研究・開発が行われ、新たな製品が次々と市場に投入されている。甘酒の潜在需要が大きく、これからも一段と伸びる市場であると期待されているからにほかならない。今後、どのような製品が出てくるのか。消費者の一人としては楽しみである。

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プロフィル
中村 宏之( なかむら・ひろゆき )
 読売新聞調査研究本部主任研究員。専門分野は、国際経済を中心とする内外の経済・ビジネス報道や金融市場、エネルギー問題。ロンドン特派員、米ハーバード大学国際問題研究所研究員、経済部デスクを経て現職。国際情勢と密接に関係する日本と世界の経済の動きを追い続けている。

2017年02月20日 13時00分

詳細は↓をCLICK
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